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胸郭の異常:漏斗胸

漏斗胸というのは、胸の中央部下2/3のあたりで、へこみがある変形です。

発生頻度は報告によりばらついているが、0.2-0.7%といわれ、男性のほうが多い。
また、時に同一家系にみられて遺伝的な要素も推測されています。

この変形の原因は、肋骨・肋軟骨の過剰成長による変形といわれています。乳幼児期に漏斗胸変形が発見されることが多く、成長とともに変形が強まってくる、と考えられています。

ただし、乳児期ではもともと胸壁が柔らかいために呼吸で凹んだものを、漏斗胸と勘違いすることがあります(偽性漏斗胸)。赤ちゃんで患者さんが来られた場合、この状態と真の漏斗胸の鑑別が必要です。成長をみながら変形の形態が直るかどうかを見ていきます。

症状としては、胸郭の変形によって、肺や心臓など胸の中にある臓器の圧迫があります。
しかし、肺活量が減るとか、心臓が圧迫されて機能が悪い、というような高度な障害を来すことは稀と思われます。
また、小児期には障害は少ないが、長じるにしたがって、とくに本人が老人になると、呼吸器の症状が強くなることもあるようです。また、猫背というような姿勢の悪さもしばしばみられます。

手術治療について

手術治療としては、従来から、胸骨挙上手術、胸骨反転手術などのかなり、大きな負担のかかる術式が行われていましたた。

アメリカの小児外科医Donald Nussにより考案された術式=ナス法手術では、胸の両脇の2cm弱の皮膚切開から胸腔鏡下に漏斗胸陥没部を持ち上げて、医療用ステンレス製あるいはチタン製のバーを胸郭において挙上を維持する、という新たな術式が広まっています。

変形が左右対称に凹んでいる場合は、非常によい結果が得られると思います。

ただし、極端に変形が強い場合や、陥凹の左右差が大きい場合は、通常のナス法手術だけでは、十分な矯正は難しいようです。非対称な漏斗胸でも陥凹はかなり改善されますが、変形が残ります。

胸の横からの手術するために胸の正面は無傷であり、出血も少なく、手術時間も比較的短い手技です。
ただし、肺や心臓といった重要な臓器の横をかすめて、金属バーを挿入しますので手術の危険性が無いわけではありません。出血や術後感染症などの合併症も報告されています。

図解:ナス法(形成外科学会サイトより)
ナス法

こども病院でのNuss法手術の経験

わたしたちも、1999年頃にNuss法を導入して、当初は、胸腔鏡を使わない特殊なやり方を行っていました。その後、胸腔鏡を挿入して、胸腔内を観察しながらおこなう、現法に準じた手術を行っています。

初回の手術法として本法を行った患者さんは、全員、順調に経過しています。
過去に他の術式で漏斗胸手術を行ったことがある患者さんの再手術では、うまくいく場合もある反面、陥凹変形の再発、手術時に胸壁の変形が高度で、手術そのものがうまく施行できないこともありました。再手術の場合は、困難があることも予想されます。

 

Dr.Nussが勤務していた病院で作成されたナス法手術の動画がありますので、リンクしておきます。